第五十二候霜始降 (しもはじめてふる) | 七十二候

七十二候「霜始降（しもはじめてふる）」は、晩秋に訪れる冷え込みを表す言葉です。大地に白い霜が降り始めるこの時期は、冬の気配を感じる節目でもあります。

霜始降とはどんな季節か

「霜始降」は、二十四節気「霜降」の初候にあたり、秋の終わりと冬の入り口を告げる候です。朝晩の冷え込みが増し、草木や大地に白い霜が見られるようになります。

霜は、大気中の水蒸気が冷えた地面や葉に凍りつく現象。透明で繊細な結晶は、自然が描く美しい季節のアートです。

この頃から空気は澄み渡り、夜空の星々が一層くっきりと見えるようになります。霜は、冬が近づいていることを静かに告げてくれるのです。

霜が降りた朝は、草木や落ち葉が白く輝き、幻想的な光景が広がります。ほんの数時間だけ見られる自然の芸術に、心を奪われる人も多いでしょう。

日の光を浴びた霜はきらめきながら溶け、儚さと美しさを同時に感じさせます。日本人は古来より、この瞬間を詩や絵に残してきました。

霜は、自然の厳しさと同時に、その美しさを私たちに伝える存在。日常の中で小さな奇跡を見つけるきっかけになります。

霜の降る季節は、農作物にも影響を与えます。農家では「霜よけ」を行い、野菜や作物を冷えから守る工夫が欠かせません。

一方で、霜は農業の区切りを知らせる存在でもあります。収穫が終わり、冬支度を始める合図として人々の暮らしに深く結びついてきました。

生活の中で霜を感じると、自然と季節の循環に寄り添う心が芽生えます。自然のリズムとともに暮らす感覚を思い出させてくれるのです。

冷え込みが厳しくなるこの頃は、体を温める料理が恋しくなります。根菜の煮物やお鍋料理は、季節の変化に合わせた定番の一品です。

特に、大根やごぼう、里芋といった旬の食材は、栄養が豊富で体を芯から温めてくれます。霜の降る季節ならではの味覚を楽しみましょう。

霜を感じる食卓に、温かい汁物やお茶を添えると、心身ともにほっと和む時間をつくることができます。

朝の散歩で白く輝く霜を探してみたり、霜の降る景色を写真に収めてみると、自然の移ろいを身近に感じられます。

また、霜の季節をきっかけに、温かい衣服や寝具を整えるなど、暮らしの工夫を楽しむのも良いでしょう。自然と人の営みは密接につながっています。

七十二候「霜始降」を意識することで、季節の小さな変化に気づき、自然に寄り添う豊かな時間を過ごせるようになります。