第四十八候水始涸 (みずはじめてかる) | 七十二候

七十二候「水始涸（みずはじめてかる）」は、晩秋に田畑の水が干され始める頃を表します。収穫を終えた田んぼに静けさが戻り、冬支度を始める自然の姿を映す候です。

水始涸とはどんな季節か

「水始涸」は二十四節気「霜降」の末候にあたり、秋の終盤から初冬にかけての時期を示します。田んぼの水を抜き、冬を迎える準備が整う頃です。

稲刈りを終えた田んぼは水が干され、やがて土がひび割れ、冬の寒さに備えていきます。農村の風景が大きく変わる季節です。

自然のリズムと農作業が一体となり、暦が暮らしと密接に結びついていたことを実感させてくれます。

水を張り育ててきた稲は、この時期に収穫を終えます。その後、田の水を抜く作業は農作業の大切な一区切りです。

田んぼの水が涸れることで、次の春の準備が始まります。農家にとっては自然と向き合い続ける営みの一部です。

「水始涸」という候には、農業のサイクルと人々の暮らしが暦に重ねられてきた歴史が映し出されています。

水がなくなった田んぼには、鳥たちが集まり、落ち穂をついばむ姿が見られます。秋の豊かさを分け合うような光景です。

ひんやりとした空気に包まれた田園は、夏のにぎわいとは対照的に、落ち着いた静けさを取り戻します。

田畑の変化を眺めることで、季節の移ろいを肌で感じることができるでしょう。自然は常に循環を繰り返しています。

「水始涸」の頃は、冬に備えた保存食作りや家仕事が増える季節でもあります。農作業の区切りとともに暮らしのリズムも変わります。

乾いた田畑は、来年の豊作を祈る心を育てる場でもありました。自然とともにある暮らしが大切にされてきたのです。

現代の生活でも、こうした自然の節目を意識することで、心に豊かなゆとりを持てるようになります。

直接農作業に関わらなくても、自然の変化を暮らしに取り入れることは可能です。散歩や小旅行で田園の風景に触れてみましょう。

また、旬の食材を使った料理や季節の行事に参加することで、自然とのつながりを日常に取り戻せます。

七十二候を意識する暮らしは、自然と調和しながら過ごす知恵を思い出させ、心豊かな時間を育んでくれるのです。