第五十候 菊花開 (きくのはなひらく) | 七十二候

七十二候

七十二候「菊花開(きくのはなひらく)」は、寒露の次候にあたり、秋の深まりを告げる候です。気品ある菊の花が咲き始め、自然や人々の暮らしに季節の彩りを添えてきました。

菊花開の季節とは

菊花開は二十四節気「寒露」の次候で、例年10月中旬頃にあたります。朝晩の冷え込みが増し、空気が澄み渡る中で、菊が鮮やかに咲き始める時期です。

黄色や白の花が次々と咲き、秋の庭を華やかに彩ります。菊は古来より「気高く清らかな花」とされ、人々の暮らしや心に深く根付いてきました。

この候は、秋から冬へと移りゆく自然のリズムを感じさせる大切な節目です。

重陽の節句と菊の風習

旧暦9月9日は「重陽の節句」、別名「菊の節句」と呼ばれます。菊花開の頃に重なり、菊とともに長寿を願う行事が行われてきました。

この日には、菊の花を浮かべた「菊花酒」を飲み、無病息災と延命長寿を祈る風習がありました。気品ある花とともに健康を願う、古人の知恵です。

また、摘んだ菊を乾かして袋に詰めた「菊枕」で眠ると、邪気を払うとも伝えられ、贈り物としても大切にされていました。

菊の花に込められた意味

菊は日本を象徴する花として知られていますが、実は奈良時代に中国から伝来したものです。やがて皇室の紋章となり、日本文化の中で特別な位置を占めるようになりました。

その気品ある姿から、菊は「高貴さ」「長寿」「清らかさ」の象徴とされ、人々に愛され続けています。菊を題材とした文学や美術作品も数多く残されています。

霜が近づく頃に咲き誇るその姿は、強さと美しさを兼ね備えた日本人の理想を映す花といえるでしょう。

菊の薬効と暮らしへの役立て方

菊は観賞用だけでなく、古くから薬草として用いられてきました。漢方では「菊花」と呼ばれ、目の疲れや充血を癒す効能が知られています。

また、発熱や頭痛、風邪予防などにも用いられ、生活の中で人々の健康を支えてきました。季節の変わり目に重宝された薬草です。

現代でも、食用菊をおひたしや酢の物にして楽しむなど、食卓に取り入れることで秋の滋味と健康を同時に味わうことができます。

菊花開を楽しむ暮らしの工夫

この時期には、各地で菊まつりや菊人形展が開催され、さまざまな品種の菊を楽しむことができます。艶やかな花姿に触れるのも季節の楽しみです。

家庭では、菊を花瓶に生けたり、菊茶をいただくことで気軽に秋を感じられます。小さな習慣が暮らしを豊かにしてくれます。

七十二候を意識しながら菊を楽しむことで、自然のリズムと調和し、季節の深まりをより深く味わうことができるでしょう。

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